トンマナの重要性と実現方法(=ブランドガイドライン)
ChatGPTもよく使う、あの言葉から
最近、Web制作やコンテンツ作成の現場で「トンマナ」という言葉を本当によく見かけます。
会話型のAIであるChatGPTも「トンマナはどうですか?」といった提案をしてくるほど、一般化してきました。
ところで、この「トンマナ」という言葉は、実は日本独自の略語(和製カタカナ語)です。
日本では略語文化が根付いていますよね。
例えば、誰もが知るハンバーガーチェーン。関東では「マック」と呼びますが、大阪では「マクド」が一般的です。
コンビニエンスストアの「セブン-イレブン」も、関東では「セブン」ですが、関西の一部では「セブイレ」と略されます。
同じブランドでも、地域によって「言い方(ルール)」が違います。
トンマナとは「流儀・作法」のこと
このように、表現には「流儀・作法」が必要です。
このビジネスにおける「流儀・作法」がトンマナ、つまり「トーン&マナー(tone and manner)」の略語です。
トーン(Tone): 色調や雰囲気。
例: 高級感を出すなら落ち着いた配色、親しみやすさを出すなら明るい配色。
マナー(Manner): 作法や様式。
例: フォントの選び方、文章の語尾(です/ます、だ/である)、記号の使い方(全角・半角の使い分け)など。
このトンマナは、ホームページ制作やSNS投稿など、あらゆる顧客との接点(タッチポイント)において、ブランドの印象を統一し、信頼感を与えるために非常に重要です。
トンマナは「感覚」ではなく「ルール」に
しかし、この「トンマナ」を「なんとなく」の感覚や、担当者個人のスキルに頼ってしまうと、必ず表現のブレが生じます。
- Aさんがつくった資料と、BさんがつくったWebサイトで、使う色が違う。
- 昨日のSNS投稿と、今日の投稿で、語尾や絵文字の使い方が違う。
こうした「ブレ」が、気づかないうちに顧客に「この会社はプロじゃないかも」という違和感を与えてしまいます。
そこで、エッグデザインオフィスとして一番おすすめしたいのが、「ブランドガイドライン」の作成です。
ブランドガイドラインとは、「うちの会社(ブランド)のトンマナはこれだ!」と明確に定義し、ルール化したものです。
ブランドガイドラインというと、以下のような大規模なものを想像し、難しそうに感じるかもしれません。
- 社名、ロゴの理由(なぜこの社名、このロゴなのか?)
- コーポレートメッセージ、コーポレートカラー
- Web制作時に使うカラーパレット、フォント(明朝、ゴシックの使い分け)
- 積極的に使うワード、NGカラーやNGワード
しかし、安心してください。完璧に完成させる必要はありません。このガイドラインをまずは作成し、必要に応じて内容をつけ足していくことで、今まで苦労していた「トンマナの共有」がほぼ解決します。これができると、誰もがブレることなく、勝手に「トンマナ」が完成します。そして、あなたの仕事が劇的に「楽」になります。
なぜ「ブランドガイドライン」が仕事を劇的に『楽』にするのか?
導入で少し触れた「仕事が楽になる」というメリット。これは単に「綺麗になる」という話ではありません。ブランドガイドラインは、あなたの企業が持つすべての課題を解決する「最強のチートシート」になるからです。
メリット1:時間とコストを劇的に削減できる
制作物のトンマナを「感覚」に頼っていると、毎回以下のような「無駄な時間」が発生します。
- 「このデザイン、前回のチラシと少し雰囲気が違くない?」という修正のやり取り。
- 「どの色にしようかな?」「このフォントでいいかな?」と毎回ゼロから悩む時間。
- 制作会社に発注する際に、イメージを言語化できないために何度も打ち合わせを重ねる時間。
ガイドラインがあれば、これらの悩みがすべて消えます。「ルール通りに進めるだけ」になるため、意思決定のスピードが上がり、制作時間が短縮されます。また、制作会社への指示も明確になるため、無駄な外注コストの削減にも直結します。
メリット2:「クライアント接点全て」で信頼感を積み重ねる
ブランドガイドラインは、単なるWebサイトやパンフレットのためだけのものではありません。
- WEBサイト制作
- チラシ、パンフレット
- 名刺
- メールの署名、営業資料
企業がクライアントと接する「全てのタッチポイント」において、統一されたトンマナが適用されます。この一貫性こそが、プロフェッショナルな企業イメージを生み出し、圧倒的な信頼感の獲得につながります。「この会社は細かい部分までしっかりしている」と感じてもらえれば、それはブランドの大きな力になります。
メリット3:ブランドを「資産」として守り、育てる
あなたのロゴやデザイン、メッセージは「うちの会社らしさ」が詰まった大切な資産です。ガイドラインは、この資産を保護する役割も担います。
実は、当社のクライアントにもこのような事例がありました。 元々、イメージに合うフリー素材のイラストロゴを使っていらっしゃいましたが、「ブランドガイドライン」を作成するにあたり、「他の企業も使えるロゴでは、うちのブランドを育てられない」と考え、当社スタッフがオリジナルのロゴを制作する提案をしました。もちろん、「色、雰囲気」といったトンマナをしっかりと合わせて。
そして、そのロゴは完成後すぐに商標登録をしました。
ガイドラインを通じて「独自ルール」を決めることは、「唯一無二のブランド資産」を確立し、商標登録などによって知的財産として守る第一歩になります。
メリット4:チームの教育コストと属人性を解消
「トンマナ」が明確でない場合、新しい担当者が入るたびに教育(OJT)に多大な時間がかかります。また、個人のセンスや解釈によって、制作物の品質がブレる「属人性※」の問題も発生します。
※「属人性(ぞくじんせい)」とは、
簡単にいえば、業務が特定の個人に依存し、その人がいなければ、遂行できない状態のこと
ガイドラインは、「うちの会社の表現ルールブック」です。新しいメンバーはこれを読めばすぐにブランドのトーン&マナーを理解できます。既存のメンバーも共通の基準で制作を進められるため、コミュニケーションのブレがなくなり、チーム全体の制作・発信力を底上げします。
【最重要セクション】ガイドライン作成は「暗黙のルール」の明文化から
ブランドガイドライン作成において、最も重要なスタート地点は、「難しそうな項目」を考えることではありません。それは、今まで社内で阿吽(あうん)の呼吸で通っていた「暗黙のルール」を、スタッフ全員で意見を出し合い、一つ残らず「明文化」することです。
なぜ「暗黙のルール」の明文化が最重要なのか?
現場には、「当たり前のことだからみんな知ってるだろ」「いちいちそんなこと言わなくてもわかるだろ」といった、言語化されない慣習や前提が大量に存在しています。
しかし、これこそがブレの原因です。
- 「うちの会社では、お客様を『〇〇様』と呼ぶのが暗黙のルールだった…」
- 「資料の行間は、なんとなく『1.5』にするのが慣習だった…」
- 「あの色は、縁起が悪いから使っちゃいけない『暗黙のNGカラー』だった…」
当事者にとっては「常識」でも、新しく入ったスタッフや外部のパートナーには全く伝わりません。その結果、「なぜか雰囲気が違う」「やり直しが発生する」といった非効率が生まれます。
暗黙のルールを明文化するメリット
この「暗黙のルール」をすべて洗い出し、ガイドラインに記載することで、以下の効果が得られます。
- 全員が同じスタートラインに立てる:スタッフ全員が「これがうちの会社の共通言語だ」と認識でき、制作物に対するフィードバックや修正のやり取りが激減します。
- 迷いがゼロになる:「いちいち聞かなくてもわかる」状態になり、作業効率が大幅に向上します。
- スタッフみんなが幸せになれる「なんでこれを知らないんだ」というストレスがなくなり、気持ちよく仕事に取り組めるようになります。
とりかかりのおすすめ
まずは、以下のテーマでスタッフみんなで会議を開き、「今まで言語化してこなかったこと」をすべて箇条書きにしてみてください。
- お客さまへの言葉遣い(例:敬語のトーン、メールの締めの言葉)
- 資料作成の基本フォーマット(例:パワポのテンプレート、箇条書きのルール)
- 社内で使ってはいけない「内輪の言葉」
- 「なんとなく」避けている色やデザイン
この「暗黙のルール」をガイドラインに記載することこそが、あなたの仕事が劇的に『楽』になるための、最も簡単で確実な第一歩となります。
ブランドガイドラインの具体的なつくり方
ここでは、難しく考えずに、まずは「箇条書き」で良いので、自社のルールを明確にするための項目と、その作成のポイントを提案します。
| ステップ | テーマ | 記事で強調したいポイント |
| ステップ1 | 「なぜ」を明確にする | ロゴや社名の理由、コーポレートメッセージ、ブランドの「核」を言語化する。「誰に(ターゲット)」、「どうなってほしいか(ミッション)」を明確にする。 |
| ステップ2 | デザインのルールを決める | 「視覚的なトンマナ」を定義する。ロゴ、カラーパレット、フォント(明朝/ゴシックの使い分け)など、具体的な数値を指定する。 |
| ステップ3 | 言葉遣いのルールを決める | 「文章のトンマナ」を定義する。語尾のスタイル、一人称の呼び方、積極的に使うポジティブワード、NGワードを指定する。 |
| ステップ4 | NG例もセットで作成する | 「良い例」だけでなく「悪い例」もセットで記載することで、ルールがより明確になり、実務で迷いがなくなる。 |
難しくない!ブランドガイドラインに「まず含めるべき」4つの基本項目
ブランドガイドライン作成の目的は、「迷いをなくす」ことです。「完璧」を目指す必要はありません。まずは以下の4つの基本項目から、自社のルールを「箇条書き」で定義していきましょう。
1. 「なぜ?」を言語化する:ブランドの核を定義する
デザインや言葉のルールを作る前に、「私たちのブランドは何者で、どこを目指しているのか」という核の部分を明確にします。これが、全てのトンマナの土台になります。
- 社名、ロゴの理由:なぜこの社名なのか?このロゴマークの形や色には、どんな意味が込められているのか?
- コーポレートメッセージ/ミッション:私たちは誰に、どんな価値を提供したいのか?(例:「すべての人の生活を豊かにする」「顧客の未来を創造する」など)
- ターゲット:誰に向けて発信しているのか?(例:30代〜40代のIT企業の経営者、子育て中の主婦層など)
POINT: この「核」が決まれば、「高級感のあるトンマナにしよう」や「親しみやすい言葉遣いにしよう」といった方向性が自然と決まります。
2. デザインのルール:視覚的なトンマナを定義する
Webサイト、チラシ、パンフレットなど、目に触れる全てで一貫性を持たせるための視覚的なルールです。
| 項目 | 定義すべき内容 |
| コーポレートカラー | メインカラー(ロゴの色)、サブカラー、アクセントカラー。必ず「カラーコード(#RRGGBB)」で指定し、使用比率も決める。 |
| フォント | 見出しに使うフォント、本文に使うフォントをそれぞれ指定。明朝体とゴシック体の使い分けのルールも決めておく。 |
| ロゴの使用規定 | 最小サイズ、ロゴの周りに設ける余白(アイソレーションエリア)、使用を避ける背景色、変形・色変更の禁止などを明記する。 |
| 画像/イラストのトーン | 使用する写真の雰囲気(例:明るい、プロフェッショナル、自然体など)や、イラストのタッチ(例:手書き風、シンプル、デフォルメなど)を指定する。 |
3. 言葉遣いのルール:文章のトンマナを定義する
読者とのコミュニケーションの「雰囲気」を統一するためのルールです。特に、WebサイトやSNSでブレやすい部分です。
| 項目 | 定義すべき内容 |
| 語尾のスタイル | 基本は「です・ます調」か「だ・である調」かを統一する。 |
| 一人称・二人称 | 会社の一人称(例:「当社」「弊社」)と読者の呼び方(例:「お客様」「お客さま」「あなた」)を統一する。 |
| 積極的/NGワード | 積極的に使いたい言葉(例:「共感」「信頼」「未来」)や、絶対に避けるべきNGワード(例:不確実な表現、他社批判など)のリストを作成する。 |
| 記号・句読点 | 句読点(、。)の使用方法、全角・半角の使い分け(例:数字やアルファベットは半角など)のルールを定める。 |
4. 迷いをなくす:NG例(してはいけないこと)をセットで載せる
ルールだけでは、実務で「これはOKなの?」と迷うことがよくあります。そこで、ガイドラインには「してはいけないこと(NG例)」を必ずセットで記載しましょう。
- ロゴのNG例 「色を変えたロゴ」「引き延ばして縦横比が崩れたロゴ」
- フォントのNG例 「本文に指定外の装飾フォントを使った例」
- 言葉遣いのNG例 「過度にフランクな表現を使った例」
【まとめ】トンマナ、ブランドガイドライン
このように、ブランドガイドラインは、一気に完璧を目指すのではなく、まずは「トンマナのブレを防ぐための最低限のルールブック」として作成し、日々の活動で疑問点が出たら随時追加・更新していくイメージで取り組んでみてください。
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2008年1月に起業し、2025年で17年目を迎えました。これまで一貫して「成果につながるWEBサイト」をテーマに、中小企業を中心とした幅広い業種のサイト制作・運用に携わってきました。
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近年は、AI時代の検索体験(SGE / AI Overviews)への最適化にも注力し、自社およびクライアントサイトが実際にAI概要で紹介されるようになっている経験をもとに、SEO・コンテンツ戦略を検証・発信中です。
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